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研究者を志す皆さんへ

研究者(大学教員や研究所の研究者)として生きていくことを目指し,それを実現するためには,大学院の修士・博士課程の期間に,将来にわたるロードマップ(いつまでに何を学び,何を成し,将来はどのような研究を展開したいか,の道筋)をよく考えながら,1年1年を過ごすことが重要だと思います。そして,「そのロードマップをスタートさせることできる研究室」 and/or 「自分の価値観に合う研究室」を選び,そこで大いに学ぶことが,実現に向けての第一歩だと思います。
以下に,ロードマップを考えるうえでの素材(我々が,考えていること,重視していること,指導していることなど)を載せました。研究室選びの,もしくは,ロードマップを考えるための,参考にして下さい。
 


Scienceの現実

「自分(達)が見つけた発見」,「自分(達)の仮説とその証明」を世界に発信し,世界中の研究者と議論を重ねて,「真実に到達すること」は,本質的にとても楽しいことです。これは,「世界中で,仲間をみつけ,仲間とともに,助け合いながら,謎解きの旅をする,ポイントポイントで冒険の書に記録(=論文を発表)しながら。。。」といった,ロールプレイングゲームにどこか似ているように思います。
しかし,時間を無限に使えるゲームの中とは異なり,現実の研究では,仲間と共に全速力で疾走したとしても,「やりたい研究」の全てを実施することは,1人の研究者の持ち得る「時間」スケールの中だけでは,残念ながら難しい,という現実もあります。従って我々は,「高度な研究課題を解く」ことを最終目標にして,たくさんの「やりたい研究」を,実現の可能性(できる,できそう,わからない,できなそう,できない)と優先順位を常に考えながら取捨選択し,どうやるか?なぜやるか?に対して常に答えを持つことが重要だと考えています。また,
 
世の中では一般に,サイエンスといえば「キレイでスマートなもの」ととらえられがちだ。教科書が複雑に絡み合った研究成果をきれいな形に整理してしまっているからかもしれないし,マスメディアが研究成果のおいしいところしか報道しないからかもしれない。とはいえ,サイエンスでも,喜怒哀楽をもった人間の日々の行いの集積だ。美しい結果や成功譚ばかりではない。最先端の研究の現場は,誤解から生まれた誹謗中傷や,研究者生命を賭けた利己的な戦いに満ちている。(大河内直彦「チェンジング・ブルー」より抜粋)
 
に書かれているように,どんなに正しい結果を主張したとしても,研究分野のコミュニティが受け入れてくれないことが多々あります。実際,10年後,引退後に,主張(成果)が認められることは,よくあることです。