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当研究室について

 

 
我々が追求するサイエンス

 自然界の生物・生態系は,極めて長い年月をかけて行われてきた try & error の結果として,資源(エネルギー)を最も効率的に獲得し,最も効率的に利用するように進化してきたと考えられています。これを科学的に証明するためには,光合成により獲得された太陽エネルギーが,地球の生物圏を,どのようなルートを通って,どのように保存,移動,蓄積,消費されているのか,また,それらが,生物の生理学的反応における物質収支を映す鏡である「有機化合物の安定同位体比」にどのように記録されているのか,を正しく理解する必要があります。そして,このエネルギーの「流れ」を知ることは,地球環境の形成や変遷に,生物や生態系がどのよう関わっているのか,もしくは,関わってきたのか,を知ることに繋がります。私たちの研究室では,「有機化合物の組成と安定同位体比」を主要なツールとして,生物,生態系,あるいは環境における「エネルギーの流れ」を解明することを,大きな目的として研究をおこなっています。
 
 

有機化合物の安定同位体比とは?

自然界には,多種多様,ほぼ無限の種類の有機化合物が存在し,それぞれが非常に特徴的な機能・役割を持っています(... 持っているはずですが,よくわからないものが多い)。そして,有機化合物を構成する水素・炭素・窒素などの元素には安定同位体が存在し,その比率には,

  • 地球上の物理化学・生化学反応の基質・経路・フラックスに対して定量的に変化する
  • この基本原理が個々の反応スケールの研究から地球化学・地質学スケールの研究まで共通の一般則として広く適用できる

という2つの性質があります。従って,有機化合物の安定同位体比の研究には,適切な有機化合物(または,その一部の部位)の適切な元素の同位体比を,研究目的に合わせて「うまく」使うことができれば,我々の周りで起こる様々な現象の5W2H(who, what, why, when, where, how, how many)を,優れた精度で「定量的」に理解することができる,という可能性があり,またそれに挑戦する「おもしろさ」があります。この「おもしろさ」が,私たちの研究室の重要なモチベーションの1つであり,それを国内外の共同研究者や研究室の学生達と共有したいと考えています。
 
 

取り組んでいる課題

当研究室では「有機化合物」と「安定同位体比」をキーワードに,以下の項目に焦点を充てながら,サイエンスの発展に貢献したいと考えています。
 

  • 生物が,環境変化(季節の変化,飽食や飢餓,よそ者の侵入,など)に対して,どのように適応*しているのか
  • 生物が,寒冷・低温環境において,どのように適応しているのか
  • 生物間または生物内における,エネルギーや物質の流れ
  • 有機化合物の安定同位体比に変化をもたらす生理学的プロセスや,メカニズム(とくに,その一般性「generality」とゆらぎ「predictable fluctuation」を正しく理解して,普遍性「universality」を導く)
  • 有機化合物(または,その分子の中の特定の元素)の安定同位体比分析法の新規開発,及び,それらを用いた新しい方法論の確立と応用研究 
ほか

 適応* 適応には,遺伝的な変化を伴う適応(adaptation),環境・季節変化への順応( acclimatization),人為的な環境変化への順応(acclimation)などが含まれます。 

ガスクロマトグラフ-同位体比質量分析計
落葉樹の開花や芽吹きにおける貯蔵性有機物利用の研究
共生におけるエネルギーフローの研究 
低温科学研究所2018〜2019掲載の研究室紹介は,こちら