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うまく飼育するために

海水魚やサンゴを水槽内でうまく飼育するためには,① アンモニア濃度,② 温度,の2つにとくに注意し,飼育水をキレイに保つことがとても重要です。
 
 

アンモニア濃度について

pHが6-7の淡水に比べて,pHが8付近の海水では,魚などから排出されるアンモニアは,
 

アンモニア ⇄ アンモニウムイオン (pKa = 9.25)
 

の平衡反応によって,魚にとって猛毒である「アンモニア」側に移行しますので,「給餌→排泄→アンモニア濃度の上昇」には,とくに注意を払わなければなりません。

 


Beman et al., 2010 PNASより
 
当研究室では,内部フィルター,底面フィルター,上部フィルター,外部フィルター,オーバーフロー+ろ過槽,背面ろ過など,様々なろ過装置を用いています。これらのろ過装置は,下図の硝化反応と脱窒反応によって,水槽中のアンモニアを除去するようにデザインされています。
 


 
まず,生き物が排出したアンモニアは,アンモニア酸化菌(ニトロソモナス属の菌)によって亜硝酸イオン(アンモニアに比べて,約1/10の毒性)になります。さらに亜硝酸イオンは,亜硝酸酸化菌(ニトロバクター属の菌)によって,硝酸イオン(アンモニアに比べて,約1/100の毒性)になります。
これらの反応をまとめると,
 

 
となり,猛毒のアンモニアを,毒性が1/100の硝酸イオンに変えることができるのです。
そして,水槽やろ過層の中に,酸素が無い場所をうまく作ることができると,硝酸イオンが ,脱窒菌によって,一酸化窒素,亜酸化窒素を経て,窒素ガス(無害)になります。
この反応をまとめると,
 

 
となり,猛毒のアンモニアを無害化することができるのです。そして,作られた窒素ガスは,水槽の外へ放出していきます。
 

温度について

海は広大であり巨大なバッファーとして働くため,とても安定した環境です。そのため,海水魚やサンゴは,様々な物理・化学パラメーターの変化に,とても弱い生き物です。その中でも,温度はとくに重要です。
水槽は研究室の中に設置されていますが,それでも,ヒーターもクーラーも無い場合には,1日の中での温度変化は,10℃以上になることもしばしばです。このような温度変化は,
・ 海水魚やサンゴにとって,かなりのストレスになる
・ 酸素の溶解度が変わる(下図)
・ ろ過バクテリアの活性が変わる
ため,安定的に飼育をする上で,非常に大きな問題になります。
 

 
当研究室では,ヒーターとクーラーを使い,また,水槽内外の温度を24時間モニタリングして,可能な限り,飼育水槽の温度を一定に保つようにしています。
 
温度モニターの例
 (赤:室温,緑:海水魚水槽,青:低塩分水槽,黄:低温水槽)