生物分子機構分野 - 研究内容

研究内容


昆虫の生体防御機構における異物認識の分子機構


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 生物は秩序をもって、外界から侵入してくる異物から己を守っている。この自己を守るシステムは生体防御系と呼ばれ、高等脊椎動物おいては自然免疫(先天性免疫)と獲得免疫(後天性免疫)から成る。 ヒトでは抗体の多様性を利用した獲得免疫が病原体やウイルスに対する生体防御系として考えられ、医学分野において多くの研究がされてきた。近年、哺乳類で獲得免疫と自然免疫が強く連携して働くことがわかり、広い生物種に存在する自然免疫の普遍性や重要性が明らかになってきている。

 昆虫は地球上で海洋を除くほとんどの陸地に生息しており、多様な生活環境に適応している。昆虫が地球上でもっとも繁栄している動物群になりえた理由のひとつとして、様々な環境に存在する病原微生物に対抗できる強力な生体防御系をもっていたことが挙げられる。獲得免疫をもたないにもかかわらず、昆虫の生体防御系が強力なのはフェノール酸化酵素前駆体活性化系や抗菌蛋白質誘導合成系などの自然免疫が機能的に発達しているためであると考えられている。

 当研究室ではフェノール酸化酵素前駆体活性化系や抗菌蛋白質誘導合成系が発動するきっかけとなる異物認識という現象を中心に、昆虫の微生物に対する生体防御機構を生化学、分子生物学的手法を用いて調べている。