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博士課程の中田和輝くんのJGRの論文が松野環境科学賞を受賞



第2回(2016年度)松野環境科学賞が、大学院環境科学院地球圏科学専攻博士後期課程の中田和輝(当海洋・海氷動態研究室所属)に授与されることが決まりました(7月7日付け)。同賞授賞式は、9月23日(金)午後に開催の「環境科学院ホームカミングデー・イベント」のなかで行われました。


対象論文
論文名:Variability and ice production budget in the Ross Ice Shelf Polynya based on a simplified polynya model and satellite observations.
著者名:Nakata, K., K. I. Ohshima, S. Nihashi, N. Kimura, and T. Tamura
掲載誌名、巻、ページ、掲載年:Journal of Geophysical Research: Oceans誌,120巻,6234-6252頁,2015年


対象論文の内容と選考理由
   本論文で著者は,全球海洋中で最大の海氷生産域であり南極底層水の生成域でもあるロス棚氷ポリニヤを対象に,まず,マイクロ波放射計(AMSR-E)による衛星観測データや大気再解析データをもとに,最新のアルゴリズムによって,ポリニヤ面積,海氷発散量,海氷生産量の高精度時系列データを作成した.次に,これらのデータを用い,ポリニヤ面積の変動を支配する力学的・熱力学的要因の寄与を明らかにすることにより,従来の沿岸ポリニヤモデルに修正を加え,その妥当性を検証した.さらに,ポリニヤの拡大・縮小過程への地上風や海流の効果,海氷生産量の年々変動の要因などについての定量的な解析を行い,ポリニヤプロセスの実態を明らかにした.
   南極沿岸ポリニヤでの海氷生成プロセスは,南極底層水の生成を介して熱塩循環を駆動することにより,地球環境の形成に大きな役割を果たしている。本論文は,現場観測の困難さから解明が遅れていた同プロセスに対し,衛星海氷データを駆使することで詳細な知見をもたらし,適切なモデル化に向けた重要な示唆を与えた.その成果は,当該分野において大きな影響力を持つことが期待され, European Space Agencyのウェブページで紹介されるなど,既に国際的に高い評価も受けている.
   筆頭著者は,本学院修士課程・博士課程において,研究テーマの設定から解析手法の選定,実際の解析と結果の解釈に至るまでをすべて主体的に進めており,当該分野の発展に寄与する研究者としての資質を十分にもつ.
   以上のことから,本論文は松野環境科学賞の受賞に相応しいと判断した.