北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H23

H23-5 サステナビリティ・ウィーク2011講演アーカイブ:宙と陸から観る氷河・氷床の今
H23-4 北極海の海氷生産工場を明らかにする!
H23-3 氷結晶の形がきまるしくみは何か
―国際宇宙ステーションにおいて行われた世界初の氷結晶成長実験
H23-2 海洋生物を起源とする海洋大気の有機エアロゾル─有機態窒素の重要性─
H23-1 オホーツク海の最大海氷面積は何によって決まっているのか?

北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H23-5

北海道大学 サステナビリティ・ウィーク2011
GiFT2011 -Global Issues Forum for Tomorrow
講演アーカイブ:http://sustain.oia.hokudai.ac.jp/sw/jp/events/2011/gift#a-3

S1-1 杉山 慎 (低温科学研究院)
『宙と陸から観る氷河・氷床の今』

アーカイブ:http://ustre.am/_1emxx:Tm8

人工衛星の観測によって、世界の氷河・氷床が縮小していることが明らかになってきました。温暖化による気温の上昇で氷がたくさん融けているのでしょうか?宇宙から見ているだけでは全てはわかりません。本当のことを理解するには、現地に行って、氷河・氷床のさまざまなメカニズムをその場で捉える必要があります。

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北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H23-4

研究課題

北極海の海氷生産工場を明らかにする!

研究者

田村 岳史1,大島 慶一郎2

  1. オーストラリア・タスマニア大学
  2. 北海道大学・低温科学研究所
内容

海水が凍って海氷ができるとき、海水中の塩分の大半は氷から吐き出されるので、塩分の高い重い水が作られます。北極海では、この重い水の潜り込みが海洋構造を決める重要な要素になっています。海氷生産が大きい所で重い水が作られるのですが、北極海ではどこでどのくらい海氷が生産されているかはよくわかっていませんでした。 本研究は、人工衛星データに気象データも組み合わせて、北極海では初めて海氷の年間生産量の空間分布(マッピング)を示した研究です。最も海氷生産が高い海域はグリーンランド北西部の North Water Polynya(NOW)であることもわかりました。過去16年にわたる海氷生産量の変動も示されており、夏季の海氷激減によって変わりゆく北極海の理解にも基礎的な研究となります。本研究による海氷生産量のデータセットは、今までになかった、モデル研究の比較・検証データにもなるので、以下のサイトで公開されています。
http://wwwod.lowtem.hokudai.ac.jp/polar-seaflux/

図1. 北極海における年間積算海氷生産量の空間分布(1992-2007年で平均)。海氷の厚さ(m)に換算して示したもの。海氷は沿岸ポリニヤという局所的な場所で多量に作られている。

発表論文

なお、上記論文は、American Geophysical Union(AGU)の "Research Spotlight" (Highlighting exciting new research from AGU journals)に選ばれ、成果が紹介さました。"First map of sea ice production in Arctic coastal polynyas", EOS, 92-41, p. 360, 11 October 2011.

公表日

2011年7月

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北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H23-3

研究課題

氷結晶の形がきまるしくみは何か―国際宇宙ステーションにおいて行われた世界初の氷結晶成長実験

研究者

古川 義純1,横山 悦郎2,吉崎 泉3,島岡 太郎4

  1. 北海道大学・低温科学研究所
  2. 学習院大学・計算機センター
  3. 宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所
  4. 日本宇宙フォーラム
内容

結晶の形は,結晶の成長とともに簡単な形からより複雑な形へと発展していきます。過冷却水の中での氷の樹枝状結晶の成長は,この現象の最も典型的な例です。しかしながら,結晶成長に伴って放出される結晶化の潜熱のために成長している結晶の周囲には温度分布が生じます。地上の重力下で氷結晶の成長実験を行うと,この温度分布のために必ず結晶に周辺で熱対流が生じます。このため,結晶の形が大きく歪んでしまい,結晶の形がきまるしくみを理解するうえで大きな障害となります。このため,2008-2009年に国際宇宙ステーション「きぼう」において,過冷却中での氷結晶成長の無重力実験を世界に先駆けて実施しました。図1は,「きぼう」で成長した世界初の氷結晶の写真です。この実験では,3ヶ月の実験期間中に,134回の氷結晶成長を繰り返し行うことに成功するなど,国際宇宙ステーションで行われたさまざまな宇宙実験の中でも傑出した成功を収めました。

この実験で取得されたデータの第一次解析が行われ,結晶成長速度の極めて精密な測定が可能になりました。さらに,氷のベーサル面の成長速度の変動が,氷結晶の形の発展(すなわち,形態不安定化)の“きっかけ”になることがはじめて示されました。この実験の成果はさらに詳細に解析され,氷の結晶形の発展がどのようなしくみで起きるのかを詳細に解明できると期待されています。

図1. 国際宇宙ステーション「きぼう」で成長した氷結晶の写真。細いガラス管の先端から結晶が成長している。

発表論文

なお,上記論文は『Nature Chemistry』誌(2011年8月号)の research highlights に選ばれ,成果が紹介されました。 "Heavy ice patterns", Nature Chemistry, 3, p. 572, August 2011.

公表日

2011年6月1日

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北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H23-2

研究課題

海洋生物を起源とする海洋大気の有機エアロゾル─有機態窒素の重要性─

研究者

宮﨑 雄三1、河村 公隆1、鄭 進永2、古谷 浩志2、植松 光夫2

  1. 北海道大学・低温科学研究所
  2. 東京大学・大気海洋研究所
内容

海洋大気エアロゾルは雲粒の生成などを通して地球の放射収支に影響を及ぼし、海洋における炭素・窒素循環にも重要な役割を果たします。海洋大気において硫酸塩など無機エアロゾルについては古くから多くの研究が行われてきましたが、近年、海洋生物を起源とする有機エアロゾルの重要性とその大気化学における役割が注目されています。私たちは有機エアロゾルのなかでも、極性などエアロゾルの化学特性を決める上で重要な因子である含窒素成分に着目しました。今回、これまでほとんど研究が行なわれて来なかった「海洋生物が有機態窒素エアロゾルの生成に与える影響」を明らかにするため、私たちは夏季の西部北太平洋上で採取した大気エアロゾルについて有機態窒素の測定を行いました。この中でエアロゾル中の有機態窒素を新たに水溶性と非水溶性画分に分け、海洋生物起源のトレーサー化合物及び安定炭素・窒素同位体比の分析結果と併せてデータを解析しました。その結果、海洋生物活動の影響を強く受けたエアロゾルほど有機態窒素に富むことが新たにわかりました。これらのエアロゾル中では有機態窒素は全窒素の7割近くを占め、これまで見過ごされてきた非水溶性画分が支配的であることを初めて明らかにしました(図1)。さらにその多くは植物プランクトン及び海水中のバクテリアに由来することが示唆されました。また海洋表面の砕波に伴う大気へのエアロゾルの直接放出がこれら非水溶性の有機態窒素エアロゾル生成に大きく寄与していることを示す結果も得られました。従来、汚染物質を中心とする大気から海洋への供給という観点で考えられてきた大気-海洋間の窒素循環において、今回の成果は海洋生態系からの有機エアロゾルの供給が大気化学・雲生成へ及ぼす影響を理解する上で鍵となるものです。

図1. 夏季の西部北太平洋域における(a)エアロゾル観測点の緯度、(b)後方流跡線解析により推定されたエアロゾルの起源域における表面海水のクロロフィルa平均濃度、及び(c)エアロゾル中の有機態窒素・無機態窒素の濃度と海洋生物起源トレーサーであるメタンスルホン酸(MSA)濃度の時系列変化。横軸の「D」は昼間、「N」は夜間に採取したデータを示す。赤で示した非水溶性の有機態窒素(WION)エアロゾルが全窒素の大部分を占め、その時間変動は海洋生物影響の指標である(b)及び(c)のMSAの変動と良く対応しているのがわかる。

発表論文

なお上記論文は『Nature Geoscience』誌(2011年5月号)の“Research Highlights”に選ばれ、成果が紹介されました。
"Organics from the sea", Nature Geoscience, 4, p. 276, May 2011.

公表日

2011年4月1日

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北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H23-1

研究課題

オホーツク海の最大海氷面積は何によって決まっているのか?

研究者

中野渡 拓也、大島 慶一郎、永井 祥子

内容

海氷域は、大気と海洋間の熱交換を遮断する役割を持つことから、その増減メカニズムの解明は、地球の気候変動の理解や予測において重要です。我が国に隣接するオホーツク海の海氷面積を決定する要因について、これまで大気による冷却の影響や海氷の漂流効果に注目した研究が多く行われてきましたが、海氷が最終的にどこまで張り出すかについては、それだけでは充分説明することができませんでした。この研究では、新たな要因として海が保持する熱の影響に注目し、我々の研究グループが保有する海洋観測データなど、利用可能な全ての海水温データを、過去30年間に遡って解析しました。その結果、海氷が最も張り出す2-3月の海氷面積(以下、最大海氷面積)は、オホーツク海内部ではなく、前年の秋季における東カムチャッカ海流の海水温の変化と密接な関係があることがわかりました(図1)。海洋循環場を調べた結果、東カムチャッカ海流水の持つ暖かい水温情報は、数ヶ月かけてオホーツク海に到達し、海氷域の拡大に影響を及ぼすことが強く示唆されました。この東カムチャッカ海流の海水温と、従来から海氷面積の拡大との強い関係性が指摘されているオホーツク海の風上における晩秋の気温の情報を組み合わせることによって、最大海氷面積の予測が3ヶ月前の時点において、相関係数0.84という高い精度で可能であることもわかりました(図2)。今回の研究は、海氷増減に対する海洋の重要性を示すと共に、海氷の長期予測の精度を飛躍的に向上させることにも貢献することが期待されます。オホーツク海の最大海氷面積の予測に関する情報は、海洋・海氷動態グループのホームページ(http://wwwod.lowtem.hokudai.ac.jp/~nakano/msie_j/msie_forecast_j.html )にて配信中です。

図1. 過去30年間のオホーツク海における最大海氷面積と前年の秋の海水温との相関係数(カラー)の分布。最大海氷面積は、東カムチャッカ海流域(赤枠の領域)の海水温と高い負の相関関係があることがわかります。

図2. 過去30年間のオホーツク海における最大海氷面積の実測値(青色バー)と東カムチャッカ海流の海水温の情報を加えた予測モデルによって見積もられた予測値(■もしくは●)。予測値は実測値と非常によく対応しており、海水温の情報が最大海氷面積の予測において、有用であることが確認されました。

発表論文
公表日

2010年12月15日

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