北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H17

H17-6 南極氷床コアに含まれる塩微粒子の発見
H17-5 石狩湾上の水平風シアラインに沿って発生した渦列状降雪雲のドップラーレーダー解析
H17-4 北方森林火災による永久凍土攪乱と温室効果ガスの放出
H17-3 宇宙氷微粒子におけるメタノール分子生成と重水素濃集機構
H17-2 モンテカルロ法を用いた雪片形成のシミュレーション
H17-1 オホーツク海沿岸定着氷の厚さの観測及びモデル

北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H17-6

研究課題

南極氷床コアに含まれる塩微粒子の発見

研究者

大野浩、本堂武夫

内容

極地氷床において掘削される深層氷コアは、高い時間分解能で古気候復元を可能にする貴重な情報源である。しかし、氷コアから過去の気候・環境情報を詳細に読み取るためには,その指標となる物質が氷床表面に堆積して以降の質的変化や分布の変化を考慮する必要がある。特に,様々な気候・環境変動の指標として広く用いられている各種イオンに関しては、その存在状態および氷床における反応過程・拡散過程の解明が重要な課題である。 本研究では、氷の内部に存在する大きさ数ミクロンの微小な介在物にレーザーを照射してラマンスペクトルを測定し、それが硫酸塩をはじめとする塩微粒子であることを見出した。しかも、総イオン量のかなりの部分がこの塩微粒子として氷結晶粒内に固定されていることを明らかにした。この結果は,硫酸などの共晶点の低い酸は結晶粒界に液相として存在し、元の情報が失われるとするこれまでの定説を覆すものであり,イオン濃度プロファイルの気候・環境指標としての信頼性を支持する画期的な新知見である。また、この発見によって、これまでまったく未知であった、降雪あるいはエアロゾルから氷床内部に至る反応過程を解明する見通しが得られた。

発表論文
公表日

2005 February 22

ページトップへ


北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H17-5

研究課題

石狩湾上の水平風シアラインに沿って発生した渦列状降雪雲のドップラーレーダー解析

研究者

川島正行、藤吉康志

内容

冬季、日本海上には渦状に組織化された降雪雲がしばしば発生し、降雪の集中化や強い風をもたらす。小規模な渦状擾乱は大気下層に形成される水平シア流の力学的不安定により発生することが示唆されてきたが、その発生・発達のメカニズムについて、観測データを用いて定量的に調べた例はこれまでなかった。本研究ではドップラーレーダーによる詳細な観測データを用いて、石狩湾上の水平風シアラインに沿って発生した小規模渦列状降雪擾乱の構造と運動エネルギー収支について調べた。これにより、小規模渦状降雪雲のスパイラル状の上昇流域はシア不安定に伴う風速場の変形に伴う上向き気圧傾度力により作られていたこと、擾乱は主として水平シア流の運動エネルギーからの変換により発達していたが、気圧項による運動エネルギーの輸送が擾乱の運動エネルギーの鉛直分布を説明する上で重要であることを明らかにした。

発表論文
公表日

2005 February

ページトップへ


北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H17-4

研究課題

北方森林火災による永久凍土攪乱と温室効果ガスの放出

研究者

福田正己、他

内容

5年間に渡る科学技術振興機構のCRESTプロジェクト(低温科学研究所 福田正己教授代表)で、シベリアの森林火災に伴う永久凍土攪乱と温室効果 ガスについて、現地調査に基づいて、従来の概念と異なる新たな知見を得た。東シベリアヤクーツク周辺のタイガ内で、火災による温暖化効果ガスの放出とその素過程についての野外観測を実施した。また火災による撹乱を受けた跡 地での永久凍土の融解過程とそれに伴うメタンガス発生の観測調査を実施した。森林火災による燃焼で直接的に放出される二酸化炭素フラックスと有機物質 分解に伴う二酸化炭素フラックスの長期モニタリングを実施した。森林の二酸化炭素吸収機能については、人為的な撹乱をうけた森林でのタワー観測から、直接的な炭素収支の変動を確認することができた。これら観測結果は、永久凍土地帯の森林火災は、永久凍土とその上のタイガ林との相互関係を崩し、二酸化炭素、メタンなどの温室効果ガスを放出し続けるという不可逆的な変化をもたらすことがあることを示唆しており、さらなる現象の解明とともにその早急な対策が求められる。

低温科学研究所メンバーの貢献については、下記ホームページもご参照下さい。
http://frost2.lowtem.hokudai.ac.jp/lab_guide.html

発表論文
公表日

2004

ページトップへ


北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H17-3

研究課題

宇宙氷微粒子におけるメタノール分子生成と重水素濃集機構

研究者

渡部直樹,香内晃

内容

最近の天文観測で,宇宙空間には始原的有機物であるメタノール分子が大量に存在し,さらにその重水素体(水素原子が重水素原子に置き換わったメタノール)の量が地球に比べ4桁も多いことが確認された.最新の実験的研究により,メタノール分子は宇宙に浮遊する極低温 (10K)の氷微粒子上で,低温特有の量子力学的効果であるトンネル反応により効率よく生成され,その後の表面化学反応により重水素化が活発に進むことが初めて明らかになった.

発表論文・公表日

ページトップへ


北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H17-2

研究課題

モンテカルロ法を用いた雪片形成のシミュレーション

研究者

圓山憲一、藤吉康志

内容

もし、「雪が天から送られた手紙」であるならば、雪片はそのフラクタル的な形の中に数多くの情報を含んだ「天から送られた巻物」と言える。これまでに雪片の形とサイズ分布や落下速度については、いくつか詳細な観測的研究が行われてきたが、これまで、雪片の成長過程の計算は、比較的単純な取り扱いがなされてきた。しかし、衝突確率は雪片の断面積や氷,雪粒子の相対速度に密接に関係するため、雪片の併合成長過程を正確に表現するためには、形の効果を考えることが必要である。これまでに、塵やエアロゾルの研究などでは凝集体のモデルとモンテカルロ法を用いた研究は行われているが、雪片の成長に関しては、不思議なことに、これまで行われていなかった。そこで我々は、モンテカルロ法を改良して、形の効果を考慮した雪片併合成長を計算するモデルを開発した。その結果、その結果、複雑な形が雪片の成長を促進させることを、定量的に示すことができた。また、モデルで生成された雪片の物理的性質は、従来の野外観測実験結果とも良く一致した。

発表論文
公表日

2005 May

ページトップへ


北海道大学 低温科学研究所 研究トピックス H17-1

研究課題

オホーツク海沿岸定着氷の厚さの観測及びモデル

研究者

白澤邦男、Matti Leppäranta, Tuomo Saloranta, 河村俊行、Anatoli Polomoshnov, Gennadi Surkov

内容

中緯度の典型的な季節海氷域に位置するオホーツク海の海氷域の分布や厚さは気候の変動に敏感である。オホーツク海での海氷成長モデルを開発し、オホーツク海の北部と南部沿岸域のテスト海域での10年間の気象、海洋、海氷の実測データを用いてモデルの検証を行った。1m以上成長する北部の厚い海氷域と30cm程成長する南部の薄い海氷域で、モデルは成長過程をよく再現した。また、海氷の成長は海氷下の海洋熱フラックスに大きく左右され、温暖化や気候変動による海氷の厚さの変動は、大気と共に海洋からの熱の供給の増減によって大きく左右されることが判った。

発表論文
公表日

2004 December 30

ページトップへ