低温ナノ物質科学

プログラムの背景

ナノ粒子は、そのサイズ領域が分子クラスターとバルクの間のメゾスケールにあり、バルクと比べて50%もの融点降下や9桁以上の原子の拡散速度の増大などといった特異な物性を持つ。これは、例えば気相から粒子が形成する過程を考えると、成長途中でそのサイズがナノメートル領域を経由するために、その特異な物性により、従来予想できなかった成長過程を経ることが考えられる。実際これまでに、気相から固相が形成する核生成においても液滴を介したり、ナノ粒子同士が接触すると固体でありながら水滴のように融合したりと、新規な現象を引き起こすことを実験的に示してきた。しかし、氷および関連物質のナノ粒子(以下、低温ナノ粒子とする)に関する実験的研究は行われていない。ナノ粒子の特徴を考慮した低温ナノ粒子の生成過程の理解と、実験で取得する物理定数や物性値を用いることで、雲中で雪が生成する際に液相を経由する可能性の検証や、46億年前に原始太陽系星雲内で昇華した氷が再凝固するときに、単一分子からなるナノ粒子を形成するか、鉱物の上に堆積するかといった課題の検証を行うことが可能になる。

プログラムのねらい

本プログラムは、低温ナノ粒子が示す特異な物性や新規現象を明らかにする研究を推進し、『低温ナノ物質科学』としての一分野を確立していくことを目的にしている。そのために、まず低温ナノ粒子の生成法および透過電子顕微鏡による観察手法を確立し、低温ナノ粒子の物理定数や物性値(表面自由エネルギーや付着確率など)を得ることから研究をスタートする。

プログラムの特徴

本プログラムの遂行には実験・理論・技術部の協力による多角的なアプローチが必要になる。さらに、多分野にまたがる重要な課題を含んでいるため、ナノ領域科学、表面反応化学、原子プローブ分析、計算機シミュレーション、結晶成長、微小重力科学の専門家らと学際的な共同研究を展開する。

実験装置群

当研究所の「雪氷新領域部門」現有の実験装置群を使用するとともに、新たに共同研究専用で氷や関連物質のナノ粒子を生成できる新装置の立ち上げを計画している。主要な現有装置は、極低温超高真空透過電子顕微鏡、フルイド反応透過電子顕微鏡、超高解像度光学顕微鏡、非接触型核生成環境その場観察装置、走査型プローブ顕微鏡などがある。

メンバー

木村 勇気北海道大学 低温科学研究所
稲富 裕光宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
荒木 優希神戸大学大学院理学研究科
灘  浩樹産業技術総合研究所
杉本 敏樹京都大学大学院理学研究科
河野 明男海洋研究開発機構
三浦 均名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科
田中 秀和北海道大学 低温科学研究所
日高 宏北海道大学 低温科学研究所
長嶋 剣北海道大学 低温科学研究所
千貝 健北海道大学 低温科学研究所

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