寒冷圏エコ・オミクス

寒冷圏生態系は、気候変動や環境汚染などの影響を最も受けやすい脆弱な生態系である。低温であるために外部からのかく乱による抵抗性や復元力も弱いと考えられる。

重要な生態系機能の一つに物質循環がある。その生物地球学的プロセスは、動植物と相互作用しながら、主に微生物がネットワーク的に担っている。これら微生物コミュニティーを明らかにするために、微生物数、群集構造(種組成や構成種の相対比)、種や遺伝子の多様性、その群集構造と環境因子との関連性などの情報を基に研究を行っている。

2004年、C. Venterらによるサルガッソー海の微生物群集(Science, 2004)やG. Tysonらの酸性鉱山水バイオフィルム(Nature, 2004)の報告を皮切りに、環境より抽出した粗DNA (環境DNA)の塩基配列を網羅的に解読する「メタゲノム」研究が、様々な環境試料について行なわれている。メタゲノム解析からこれまでにない膨大なDNA情報が得られ、微生物や遺伝子の新規存在や多様性について新しい知見が得られている。さらに環境因子と関連付けてより詳細に微生物コミュニティーの理解が進んでいる。これらDNA情報からの潜在的な遺伝子の発現や機能に加え、顕在的な発現や機能を解析するために、ポストゲノム学的解析法として転写レベルでのトランスクリプトーム解析(エコトランスクリプトミクス)、翻訳レベルでのプロテオーム解析(エコプロテオミクス)、代謝産物レベルでのメタボローム解析(メタボロミクス)の導入が不可欠となる。

本プロジェクトはエコゲノミクスおよびエコプロテオミクスをベースとした網羅的生物地球化学的機能モニタリングシステムの開発を目的とする。エコゲノム解析や活性情報解析(トレーサーや安定同位体)とエコプロテオミクスで得られた情報を統合し、プロトタイプの網羅的な機能アセスメント手法を提案するものである。

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