アストロバイオロジー ─ 宇宙における化学進化の素過程に迫る ─
プログラムの背景
最近の研究から,アミノ酸や有機物を含む多種多様な分子が宇宙空間の星・惑星誕生以前の極低温領域(分子雲,T~10K)にすでに存在していることが明らかになってきた.これらの分子は分子雲中で気相反応や氷微粒子(氷星間塵:~μmサイズ)上での表面反応によって簡単な原子・分子から進化したものと考えられる(化学進化・分子進化).水素分子,水分子,二酸化炭素,有機分子などは気相反応で生成することが難しく,極低温下での氷星間塵表面反応が重要になるが,その詳細(極低温表面で反応が起こりうるのか,起こるとすればどんな反応経路か,反応速度や生成分子のエネルギー状態はどうなのか?)はほとんど分かっていない.
宇宙空間の総重水素-水素原子比(D/H)は,およそ10-5である.驚くべきことに,分子雲で観測されたメタノール,ホルムアルデヒド,アンモニア,メタンなどの氷星間塵起源と思われる分子においては,重水素体(CHD2OH等)/水素体(CH3OH)の比が0.1にも上っている.これ程までに重水素体が大量に存在する理由は惑星科学・天文学上の大きな謎である.
プログラムのねらい
本プログラムは,分子が宇宙空間でどこまで複雑になりうるかという根元的な疑問に挑戦するものである.本プログラムの主たるねらいは以下の2点である.
①地球惑星科学の重大テーマである宇宙における分子の生成・進化・同位体分別に対する氷星間塵表面反応の寄与を実験から明らかにする.【これまでに例のない新しいアプローチを目指す】
②広く極低温氷表面反応の物理・化学素過程を明らかにする.【低温氷表面の化学プロセスは未開拓の分野である.「気相では起こり得ない反応」「極低温表面におけるトンネル反応」「H2O氷の反応への寄与」等に関する知見を得る】
プログラムの特徴
本プログラムの遂行には天文学・地球惑星科学・化学・物理の広い分野にわたる知識と高い実験技術が必要になる.そのために,本プログラムは地球惑星科学者と化学・物理学者のこれまでにない本格的な共同研究を目指す.
実験装置群
本プログラムでは,当研究所「宇宙物質科学分野」現有の実験装置群を使用するとともに,新たに共同研究専用の真空実験装置(原子・分子・クラスター・表面反応)の立ち上げを計画している.主要な現有装置は3台あり,それぞれ以下の備品から構成されている:超高真空実験槽,フーリエ変換型赤外吸収分光計,4K.10K冷凍機,四重極質量分析計,波長可変色素レーザー,TOF質量分析計,電子衝撃型イオン源,マイクロ波放電型原子線源.
プログラム専任教員
渡部直樹(教授):宇宙物質科学分野兼任
本プログラムにご興味のある方,共同研究のご提案は上記教員までご連絡下さい.
E-mail:watanabe_アットマーク_lowtem.hokudai.ac.jp ("_アットマーク_"を"@"に読みかえてください)
電話:011-706-5501
