南極気候システム   Antarctic CRyosphere-Ocean System (ACROS)

大気・海洋、海氷、氷河氷床からなる南極の気候システムは、全球の海水位や海洋の深層循環の様態などを決めるうえで大切な役割を果たしています。西南極と呼ばれる地域を中心として氷床が海へと急速に流れ出し、その流出のスピードが加速しつつあることが明らかになってきました。日本が南極大陸にもつ昭和基地は東南極と呼ばれる地域にあり、東南極は西南極と違って安定した場所だろうと長い間考えられて来ましたが、近年の研究で、東南極にも過去には大きく氷床が流出した場所もあることが分かって来ました。こうした氷床の振る舞いの解明には、暖かい海水がどのようにアクセスしているか、そして海と氷がどのように相互作用しているのかを理解することが鍵となっています。

東南極の沿岸には海氷が活発に産み出されている場所もあり、ここで作られた重たい海水が、海洋の深層循環の成り立ちに今まで考えられていたよりもずっと重要な役割を果たしていることも分かって来ました。一方、昭和基地のあるリュツォホルム湾は海氷が長期間にわたって海面を覆い、それほど活発に海氷がつくられている場所ではありませんが、場所によりこうした振る舞いの違いが生じる原因も十分には分かっていません。ここ数年だんだんと海氷が厚くなって観測船「しらせ」が昭和基地に近づけない、というような事態が起こるようになってきており、海氷の厚さとその変化の理解は、輸送の面から見ても重要な課題となっています。一方で、過去には海氷が突然割れて流れ出し、冬場に昭和基地の目の前が海になったというようなこともありました。リュツォホルム湾の海氷は成長と流出を十年スケールで繰り返していると考えられていますが、大気や海洋のどのような条件が海氷の振る舞いをきめるのか、氷河・氷床の融解と海洋・海氷の変化にはどのような関わりあいがあるのか、まだほとんど理解されていません。

これまで低温研はこうした海洋や海氷、氷河の役割やその変化の研究をリードしてきましたが、研究を進める中で、これらの気候システム要素間の相互作用の理解が重要であることが分かって来ました。そこで低温研の複数分野の研究者が本ACROSプログラムのもとに結集し、極地研究所が中核となって推進する日本南極地域観測事業の第9期重点研究観測(2016-22年)と連携して、集中的に研究に取り組むこととしました。遠隔操作無人探査機(ROV)をはじめとする無人観測装置など新たな手法を開発して多分野横断観測に挑戦し、人工衛星観測資料の解析による広域の現象把握や、高度な数値実験手法の活用による現象の理解を推進していきます。研究集会の開催による研究者間の交流や大学院生の観測・研究参加を通じて、寒冷圏科学全体に貢献します。ACROSは社会に広く開かれたプログラムを目指します。

ACROS の概念図
ACROS の概念図

プロジェクトメンバー

青木 茂共同研究推進部・准教授
杉山 慎共同研究推進部・准教授
大島 慶一郎共同研究推進部・教授
深町 康水・物質循環部門海洋海氷動態分野・准教授
豊田 威信水・物質循環部門大気海洋相互作用分野・助教
平野 大輔水・物質循環部門海洋海氷動態分野・助教
松村 義正東京大学大気海洋研究所・助教
田村 岳史国立極地研究所・准教授

観測隊員大募集:南極研究者や大学院生の参加大歓迎

リンク

日本南極観測

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