北海道大学低温科学研究所付属
流氷研究施設外部点検評価報告

平成11年3月

海氷研究の重要性

5. 北大流氷観測レーダー網について

流氷観測レーダー網

 19655年 (昭和40)、現地観測の充実のために、同研究所の付属機関として 流氷研究施設の設置が決定され、同時に流氷観測レーダー建設が始まった。

 レーダー・アンテナの設置点としては、レーダー電波の影を少なく、同時 に遠距離まで観測できるようにするため、海岸線に近く、かつ、高い山頂を選ぶ 必要がある。

 最初のアンテナは紋別の大山山頂に設置された。レーダーで海氷がどの程 度判別できるかはよく分からぬままの出発であった。映りは良くなかった。翌年、 アンテナ効率を上げるために、スロット型から籠型・アンテナへの取り替えが行 われた。

 1969年に、ようやく紋別、網走、枝幸の3局からなる流氷レーダー網が完成 した。観測範囲はそれぞれ海岸線から約60kmまでの海域である。

レーダー

流氷レーダー情報の検証

 レーダー映像と実際の海氷がどう対応しているか、どの程度の海氷が映っ ているのか不明であった。資料の収集、蓄積と並行して、レーダー情報の 検証に5年余を要した。ヘリコプターや船舶からの観測との対応から、波浪が強くない ときの海氷域はレーダーによって捉えられることが確かめられた。

 しかし、風波がある時には、海氷と海面の識別が不能で、判断を誤ったこ ともあった。海氷域、波浪域それぞれからの反射電波強度の時系列を調べて結果、 両者の間には明白な周波数特性の違いが認められた。これによってこの問題は解 決された。

レーダーによる流氷分布資料

 レーダーによる観測体制の確立に数年を要したが、並行して日々、年々の 海氷分布の観測が続けられ、1969年から現在に至る30年間の沿岸域の流氷量の観 測資料が蓄積された。

 これまでの定常的観測は、気象庁の測候所による沿岸からの1日1回の目視 観測だけであり、観測範囲はたかだか距岸20km、海氷面積の算定も天候状態など に支配され正確なものではなかった。これに対して、レーダーによる観測範囲は、 距岸60km、観測の時間間隔は3時間、海氷面積の算定も高精度である。

レーダー2

氷海研究のための基礎的情報

 北大流氷レーダー網によって沿岸沖合60kmまでの海氷分布が常時把握でき る。先に列記した各研究の現場観測項目は、すべて広域というより、点的な観測 であり、その物理、化学、生物学的な基礎的条件、機構の観測・研究が主体とな る。

 レーダーによる流氷分布情報は、その観測の空間的、時間的スケールによ く対応した頻度、精度を提供し得る。流氷レーダー維持は、今後のさまざまな分 野の研究の基本的情報として必要なものである。

 氷海に於ける海洋学、気象学、気候学、海洋生物学、水産学などの研究は、 すべてこれらの各現象と海氷分布の関係に帰する。これまでに蓄積された資料の 価値は各分野の観測の充実によって高まるものといえよう。

地域と北大流氷レーダー

 当施設は、1965 (昭和40) 年に設立された。同時に、流氷観測用レーダー 網の建設が開始され、3年後に完成した。観測用と同時に地域への情報提供とし ても活用されてきた。

 毎朝9時の観測結果は、北大レーダー流氷速報として、結氷期間を通して各 関係機関に通報される。この結果は、気象庁、海上保安庁の公式資料として採用 され、海氷情報、流氷速報に活かされている。漁業、海運関係機関にとっても、 氷海の航行、漁業操業のための不可欠な情報となっている。なお、当レーダーに よる日々の流氷分布図はインターネットを通じて世界に広報されるようになった。

 レーダーによる流氷情報が開始された1969年以降、流氷海難は皆無である。 地域漁民は流氷情報を得ることによって安全操業に努めるようになったと同時に 海氷についての認識を高めてきた。

 莫大な費用を要する流氷レーダーの存続の是非を論ずるとき、このような 地域の事情は充分考慮されなければならない。

6. 北大流氷研究施設の立地条件

 オホーツク海は、我が国の周りの海で唯一の結氷海域である。この海の最 南端に位置する北海道沿岸は、典型的な氷縁海域 (Marginal Ice Zone) である。 世界的に見ても、結氷海域に隣接して、小規模とはいえ、いくつもの近代的な都 市が存在するのはここだけでる。

 近年、我が国の多くの地球環境研究者も、外国の結氷域へ進出して研究・ 観測に努力中である。極海との比較研究という点からも、我が国、唯一の結氷域 であるオホーツク海沿岸海域は研究対象として重要視されてよいのではなかろう か。

 このオホーツク海に隣接する当施設は、氷海研究、とくに、氷縁海の現場 観測、研究に最も地の利を得たものといえる。国内はもとより世界の研究者のた めの、開かれた研究施設として活用される条件を整えていきたい。

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