クロロフィル代謝中間体の解析
最近、クロロフィル代謝の中間体はいろいろな視点で注目を浴びている。
- 葉緑体と核の間のシグナル伝達物質として
- 細胞死を誘導する物質として
- 光化学系タンパク質の合成と密接に関わる代謝物質として
このページでは生物適応研究室で用いている、クロロフィル代謝の中間体の定量方法を紹介する。
もとにした論文
- Zapata et al., (2000) Mar. Ecol. Prog. Ser. 195: 29-45
標準物質の入手先
- Proto IX (Frontier)
- Hemin (Avocado、どこでもよい)
- Mg-protoIX (他の研究者の方より譲り受ける、Frontierでカスタム合成)
- Mg-Proto IX ME (他の研究者の方より譲り受ける、Frontierでカスタム合成)
- DV-Pchlide a (キュウリより精製)
- MV-Pchlide a (オオムギより精製)
- Chlide a(Chl aを基質に自分で調整)
- Chlide b (Chl bを基質に自分で調整)
- Chl a (小田原のJuntecより購入)
- Chl b(小田原のJuntecより購入)
- 7-hydroxymethyl chlorophyll(Chl bより自分で調整)
- Pheophorbide a (Wakoより購入)
カラム
Waters, Symmetry C8, 150 x 4.6 mm, 3.5 um particle size
SunFire C8も使えるようだ。Symmetryに比べて、retention timeは多少変わるが、順番は変わらない。
ガードカラム
- Phenomenex AJO-4290 C8 4.0 L mm x 3.0 ID mm
- (ガードカラムホルダーはPhenomenex KJO-4282)
システム
- ポンプ: Hitachi L7100
- 検出器:Hitachi L2450 Diode Array Detector
- オートサンプラー:Hitachi L7200
- ソフトウエア:EZchrome Elite Version 2.9J
- デガッサ:L7610
- 200-2641 S/Tマイクロバイアル PP 250 ul コニカル
(または、500-1141 300 ulのロート型でもよい。) - 500-2061 スクリューキャップ イエロー PEシール一体型
溶媒
- A solvent: Methanol:Acetonitrile:0.25M aqueous pyridine = 50:25:25 (v:v:v)
- B solvent: Methanol:acetonitrile:acetone = 20:60:20 (v:v:v)
タイムプログラム
流速 1.2 min/ml主な中間体の溶出時間
その他
注意点:
- β-carotenは80% acetone中で次第に沈殿するようだ。β-carotenを定量する際には、80% acetone中で長くおいてはいけない。
- また、インジェクションのボリュームが20 ulを超える場合は、サンプルを溶解 するsolventをA solventにするか、あるいは、75%または80% acetoneにした方がよい。そうしないと、一部のピークのテイリングの原因になる。(solvent mismatch)われわれの研究室では色素を100% acetoneで抽出した後で、acetone濃度が75%に なるように、水(またはバッファー)を加えている。
- ピリジンは(あるいはピリジンに含まれている物質は)595 nmくらいに蛍光を出すようだ。色素と間違えないように注意。
- サンプル瓶にポリエチレンのインサート管を使ったところ、蛍光物質が溶け出してきて、Mg-Proto IXのすぐあとにピークとして溶出された。ガラスのインサート管を使った方がよいようだ。(京大のM先生より)
参考文献
- Ito H, Ohtsuka T, Tanaka A (1996) Conversion of chlorophyll b to chlorophyll a via 7-hydroxymethyl chlorophyll. J Biol Chem 271: 1475-1479
- Rebeiz CA (2002) Analysis of intermediates and end products of the chlorohyll biosynthetic pathway. In AG Smith, M Witty, eds, Heme, Chlorophyll, and Bilins: Methods and Protocols. Humana Press, NJ, pp 111-155
- Zapata et al., (2000) Mar. Ecol. Prog. Ser. 195: 29-45
上記のシステムとは別に島津の機器を使って同様のシステムを組んでいる。
島津のシステムには、Diode Array Detectorの他に蛍光検出器RF550をつなげて
いる。蛍光検出器はMgProto IXを検出するために、励起光 417 nm, 蛍光 600 nmにあわせてある。Proto IXの場合は励起光 400 nm 蛍光 600 nmでよいと思うが、
もっと他に良い条件があるかもしれない。
追記:Proto IXについては、励起光 400 nm 蛍光 634 nmにすると10倍以上感度が
あがるようだ。(2007.11.1)
日立の純正のバイアルは使い捨てにするには高価なので、(株)トムシック(Tel: 0426-56-5679)を通じて購入した輸入品のポリプロピレンのバイアルを用いている。ただし、このバイアルからは、アセトンで蛍光物質が溶出し、蛍光検出器でみると、MgProtoIXとMgProtoIX-MEのあとに大きなピークとして検出される。このため、蛍光検出器を用いる場合は、ガラス型のインサート管を用いる必要がある。
ピリジンは酢酸でpHを5.0にあわせる。われわれの研究室では、最初に必要な酢酸の量を測っておき、2回目の溶媒調整からはpHメーターを使わずに一定量の酢酸をピリジン水溶液に足すようにしている。酢酸の量は色素の保持時間に大きな影響を与える。
追記:世界的にacetonitrileが不足してきたため、MeOHを用いた分析を試みた。結果
min | % (B Sol) |
0 | 0 |
12 | 45 |
17 | 98 |
22.5 | 98 |
0 | 0 |
上記の条件は、上にあげた文献の条件を、早くrunが終了するように一部 改変したものである。オートサンプラーは28 min間隔でインジェクションしている。 もとのZapata et al., 2000の文献では、流速 1.0 ml/minで
0 min, 0%
22 min, 40%
28 min, 95%
38 min, 95%
40 min, 0%
Pigment | Retention time (min) | Absorption maxima (nm) |
Chlorophyllide a | 10.5 | 435, 665 |
Mg-protoporphyrin IX | 10.5 | 415, 595 |
Divinyl protochlorophyllide a | 11.3 | 440, 627 |
Monovinyl protochlorophyllide a | 11.9 | 434, 628 |
Mg-protoporphyrin IX monomethyl ester | 13.4 | 416, 550, 591 |
Protoporphyrin IX | 15.6 | 400, 503, 540, 574, 627 |
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