過去の低温研セミナー

第30回低温研セミナー 「物質循環の鍵を握る未培養バクテリアの生態」 小島 久弥(微生物生態学分野)

日時 2015年 1月15日(木)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂
多様なバクテリアが持つ種々の機能のなかには、各種元素循環の駆動力として重要なものが含まれる。環境中の物質循環とエネルギーの流れに大きな影響を及ぼす微生物のうち、純粋培養によってその性質を詳細に調べることができる状態にあるのは、例外的な一部のものに過ぎない。生態系内における各種元素の動態に関する現状を把握し、その環境変化への応答を予測するためには、環境中の未培養バクテリアに関する理解を深めることが重要である。本セミナーでは、水界における窒素循環に重大な影響を及ぼしていると考えられている生物群を例に、未培養バクテリアの性質を探る試みについて紹介する予定である。

第29回低温研セミナー 「生物に学び結晶成長を操る-ねじる・並べる・折り曲げる」 今井 宏明(慶應義塾大学応用化学科教授/低温研客員教授)

日時 2014年11月27日(木)16:00-
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂
生物は、有機分子によって結晶成長をコントロールし、多様な構造をもつバイオミネラルを作り出している。本セミナーでは、バイオミネラルに見られるナノ~マクロスケールの階層構造を示すとともに、生体内のシステムをヒントに、有機分子や高分子などを利用して結晶成長を制御し、結晶の集積体やねじれ・曲がりなどのユニークな構造体を形成する方法やそのメカニズムを紹介する。

第28回低温研セミナー 「凍った南極を融かすものは?」 青木 茂(大気海洋相互作用分野)
“What melts "Frozen" Antarctica?” Shigeru Aoki (Atmosphere-Ocean Interaction Group of ILTS)

日時 2014年10月31日(金)16:00-
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂
海洋の深層大循環は地球規模で“熱”や物質を運んでいる。南極大陸周辺の海は深層大循環の起点の一つである。南極の沿岸における水と氷のせめぎあいが、この循環をコントロールしている。海水が効率よく凍って海氷ができることで残された海水が重くなり、その水が沈みこんでできた南極底層水が全世界の海洋底に拡がっていく。一方で、海水が陸氷を融かすことで淡水分が供給され、海水が軽くなる場所もある。一口に南極沿岸とはいっても、“西”と“東”では海洋構造が違い、この海氷と陸氷のバランスが異なる。西南極では陸氷の融解量が多いことは知られていた。最近の我々の酸素同位体比を使った研究により、東南極にも、海氷の生産量も多く陸氷融解量も多い海域があることが明らかになった。近年、南極底層水が暖水化、淡水化しつつあることが分かってきたが、その原因の一つは陸氷の融解が加速しつつあることだと言われている。新たな観測手法と数値モデルを使って、南極海における水と氷のせめぎあいの実態に迫っていきたい。

第27回低温研セミナー 「遺伝子発現調節の変化による環境適応形質の進化」 田村 浩一郎(首都大学東京)

日時 2014年 9月26日(金)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂
遺伝子発現調節の変化が生物進化の要因として重要であることは、古くは“Gene regulation hypothesis”としてOhno (1972) によって提唱されたが、近年、外部形態の進化に関する研究によって脚光を浴びている(Carroll 2005, 2008)。近年、我々はショウジョウバエの環境適応に関連する生理学的形質の進化においても、遺伝子発現調節の変化が大きな要因となっていることを発見した。本セミナーでは、クロショウジョウバエの抗カビ耐性、アカショウジョウバエの低温耐性の進化に関する我々の研究成果について紹介し、遺伝子発現調節の変化が形質進化に及ぼす影響について議論したい。

第26回低温研セミナー 「大気中の有機エアロゾル:発生源、分子組成およびエイジングプロセス」 フ・ピンチン(低温研特任教授)
“Organic aerosols in the atmosphere: sources, molecular compositions, and aging processes” Pingqing FU (Visiting Professor)

日時 2014年 9月10日(水)16:00-
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂
Organic aerosols are ubiquitous in the earth’s atmosphere. They can be briefly divided into primary organic aerosols (POA, particle mass directly emitted from sources such as plant material, soil dust, biomass and fossil fuel burning) and secondary organic aerosols (SOA, particle mass formed by the oxidation of gas-phase precursors in the atmosphere). Organic aerosols can account for up to 50-80% of the fine aerosol mass, and potentially control the physicochemical properties of atmospheric particles. During the past decade, organic aerosols are highlighted because they are important environmental issues related to global and regional climate, chemistry of the atmosphere, global biogeochemical cycling, and human health.
Our research interests include the study of the sources, formation processes and long-range transport of organic aerosols in the urban, rural, remote marine and polar regions. We mainly focus on secondary organic aerosols (SOA) from the photooxidation of biogenic volatile organic compounds (BVOCs), which are emitted from terrestrial vegetation and marine biological activities. Specially, I would like to present our measurements on the organic molecular composition and stable C isotope ratios of atmospheric aerosols from urban and rural regions, and marine organic aerosols that are influenced by a combination of long-range transported continental aerosols and by the sea-to-air emission of marine organics.

第25回低温研セミナー 「Microclimate: why and how to measure it?」 Dr. Jan Wild (GIS and Remote Sensing laboratory, Institute of Botany, Academy of Sciences of the Czech Republic)

日時 2014年 7月30日(水)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂
The specificity of microclimate defined as a near ground climate at a very local scale (tens of meters or even less) is well known to every field biologist, but also farmer or even hobby gardener. Its relevance for all biotic and physic processes was well recognized by climatologist long-term ago, but less reflected in last decades of intensive research on species-climate relationship done mainly by ecologists. The reason can be that only standardized climatic data from meteorological stations were long-term only available and therefore used by ecologist as correlates for species distribution. However recently developed topoclimatic maps remembered the local climatic variability and its importance especially for species distribution.
Different kind of affordable tools, often not originally developed for measurement of microclimate, are used to build topoclimatic maps. But most of them suffer from non-standardized installation or shielding, low memory and/or battery life or wire connected constructions increasing probability of damages in a field. All these factors decrease the quality and comparability of gained microclimatic data.
Keeping in mind all these drawbacks we developed and thoroughly tested a new tool resembling small plant. I would like to present its basic technical concept comparative measurements with standard meteorological station and examples of its application ranging from long-term microclimatic monitoring in topographically complex area to microclimatic measurements in extreme conditions of alpine desert in Himalaya.

第24回低温研セミナー 「水溶液系における液体・液体転移の普遍的性質」 村田 憲一郎(相転移ダイナミクス)

日時 2014年 6月19日(木)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂
液体・液体転移とは、単一成分液体が複数の液体相を有し、その液体相間を1次転移する現象である。一見乱雑な液体相が複数の相を有するという事実は、液体の本質に関わる重要な現象であり、これまでの液体の概念に対する新機軸として注目されている。特に、水の液体・液体転移の可能性については、それ自体の興味もさることながら、この転移の臨界現象と水の熱力学的異常(4℃での密度の極大など)との関連から、今なお活発な議論がされている。しかし、予想される転移点は結晶化に対する絶対不安定領域(通称:no man’s land)に存在し、この領域内で水の実験を行うことは極めて難しい。我々は、水に結晶化に対するフラストレーションとしてグリセロールを含む糖アルコール、多糖類を混入することで結晶化を阻害し、水に起因する液体・液体転移の直接観察を試みた。セミナーでは、液体・液体転移を含む低温での水溶液の相挙動とその普遍的性質に着目し、純水における液体・液体転移の存在の可能性について議論する予定である。

第23回低温研セミナー 「地球環境と生物多様性」 原 登志彦(寒冷域植物生理生態)

日時 2014年 2月24日(月)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂
生物多様性とは、同一種の生物集団内における遺伝的多様性、生物種の多様性(種多様性)、そして生態系における生物の機能や相互作用の多様性(生態系多様性)を含む概念である。これら3つのレベルにおける生物多様性について、地球環境の観点から我々の研究成果を中心に紹介する。まず、ヨーロッパ山地草原における遺伝的多様性と植物集団が存続するメカニズムに関する研究を紹介する。草原の主要な植物は主にクローンにより無性的に繁殖するが、意外にもその遺伝的多様性は高いことを示す。次に、同一種内の遺伝的多様性は、複数の生物種が共存する種多様性にとっても重要であることを示す理論的研究を紹介する。最後に、カムチャツカ北方林における寒冷圏環境と種多様性および生態系多様性の関係について紹介する。北方林では、種多様性は低いが生態系多様性は高いことを示す。そして、今後の地球環境変動と生物多様性の未来について議論したい。

第22回低温研セミナー 「放射線による水の微粒子生成」 中井 陽一(理化学研究所 仁科加速器研究センター 櫻井RI物理研究室(兼)望月雪氷宇宙科学研究ユニット)

日時 2014年 2月13日(木)16:00-17:00
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂
放射線による水微粒子生成に関して、古くから「ウィルソンの霧箱」による放射線の飛跡の観測がよく知られている。これは過飽和の水蒸気を含む清浄な空気中で放射線の飛跡に沿って生成されたイオンのまわりに水分子が凝結し光を散乱する粒子まで成長して飛跡が観測されるのである。また近年では、雲粒子の凝結核生成が(高エネルギーの放射線である)宇宙線による大気中でのイオン生成と関係があるという仮説に対し、放射線による微粒子の凝結核生成の実験が行われている。
本セミナーでは、放射線が気体中の原子分子に引き起こす物理化学過程とそれらの過程の一部であるイオンによる微粒子核生成について簡単に説明し、「ウィルソンの霧箱実験」と実際の地球環境との関連性をもつ雲粒子核生成の宇宙線仮説の検証実験の例について触れたあと、放射線による水微粒子生成に関連して講演者が共同研究を行なっている二つの実験―1)陽子線による液滴生成、2)水蒸気を含んだ気体中での水和クラスターイオンの平衡質量分布測定―について説明をする予定である。

第21回低温研セミナー 「Presentation of the Mediterranean Institute of Oceanography (MIO), Aix Marseille University France; information about the MERMEX/MISTRALS Research program.」 Richard Sempere(CNRS, Director of MIO/低温研客員教授)

日時 2014年 1月22日(水)16:30-17:30
場所 低温科学研究所 新棟3階 講堂
The MIO is a French Oceanography research laboratory and forms part of the OSU-Pytheas Institute and is under the joint direction of Aix- Marseille University, Toulon University, the CNRS and the IRD. MIO goal is to better understand the oceanic system and its evolution in response to global changes. MIO constitutes a center of expertise in marine biology, ecology, biodiversity, microbiology, physics, chemistry, biogeochemistry and sedimentology. Although MIO working environment is the world ocean, one objective is to better understand the Mediterranean marine ecosystems response to changes in physical, chemical and socio-economical forcing induced by climate change and by growing anthropogenic pressures. Such research is undertaken in the framework of the MERMEX/MISTRALS program. MERMEX(1) Research objectives is deduced from the MERMEX group article (Progress in Oceanography, 2011) in which ~100 co-authors presented current knowledge on biogeochemistry in the Mediterranean Sea and highlighted the uncertainty on the responses to global change in the 21th Century. MERMEX is endorsed by the IGBP programs including SOLAS , IMBER and LOICZ.
(1) The MERMEX group, (2011) Marine ecosystems' responses to climatic and anthropogenic forcings in the Mediterranean, Progress In Oceanography, 91 : 593-594.

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